- 問題解決のストーリーライン(シナリオ)を仮構造的に作る
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フェーズ1:問題はありそうか?
分析的問題解決:現状の結果と望んでいる結果との違いを図に描く
科学的問題解決:理論上得られる結果と現実に得られた結果との不一致を明らかにする
- このフェーズは問題があるかどうかを確認するフェーズである。まずは用語の定義から。
R1:望まない出来事(現状)。1つしかない場合もあれば複数存在する場合もあるが、いずれも簡潔に述べるようにする。
R2:望む出来事。成果を計測できるように、具体的な表現や定量化された表現にする。必ずしも定量化する必要はないが、必ず計測可能な表現にすること。もし具体的に表現できない場合は、R2を具体的に表現することが問題解決の第一ステップとなる。R2を定量化する方法は以下の通り。
①目標を「金額」によって数値化する
②目標を「回数」によって数値化する
③目標を「率」によって数値化する
④目標を「時間」によって数値化する
⑤目標を「点数・ポイント」によって数値化する
問題(problems):R2-R1のこと。論点候補
論点(real problem):数ある問題の中で真に解くべき問題
問題発見:論点を見つけること
問題解決:R1からR2に移動すること
- STEP1:R1とR2が存在するかを確認する
- STEP2:存在するとして、なぜR2を目標とするのか、そもそもR2は本当に望むべきことなのか批判的に検討する。つまり、目的と手段を区別する。そして、R1が正しい情報なのか、バイアスがかかっていないかを検討する。
- STEP3:最後に、R1とR2は明確になっているかを確認する。もし明確になっていなければ、明確にすることから始める。ただし、R1は簡潔に記述すること。
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フェーズ2:問題はどこにあるか?
分析的問題解決:結果を引き起こしている、現状を構成する要素を図に描く
科学的問題解決:その不一致の原因となっている既存理論上の仮定を述べる
- このフェーズでは、R1を引き起こした状況(構造/プロセス)に遡り、その状況のどこにバグがあるかを確認する。つまり、問題の発生原因を簡潔に記述する。用語の定義は以下の通り
状況:スタートポイント+懸念される出来事
スタートポイント/オープニング:問題が発生する時間的・空間的状況。スタートポイント/オープニングには構造とプロセスの2つしかない。
懸念される出来事:スタートポイント/オープニング(構造かプロセス)で発生し、R1の引き金になるもの。懸念される出来事は、大きく分けて外的要因か内的要因か新しい認識のどれかになる。
外的要因:構造/プロセスを取り囲む環境から引き起こされる変化。例えば、新たな競合の出現や新たな技術への転換、政府方針や顧客の変化など。
内的要因:当事者自身により引き起こされる変化。例えば、ビジネスプロセスを増やした、新たなコンピューターシステムを導入した、新たな市場へ進出した、製品ラインを変更した、など。
新たな認識:変化が必要なことへの新たな認識。例えば、製品やプロセスの能力低下、水準以下の結果、顧客変化を意味する市場リサーチなど。
- STEP1:状況(スタートポイント/オープニング+懸念される出来事)とR1とR2を問題定義のフレームワークで図式化する
- STEP2:SCQへ変換する:Questionは未知の情報でSituationとComplimentは既知の情報。QはCから生じ、CはSの中で発生するので、Q→C→SまたはQ→S→Cの順で辿れば良い。また、SCQがどのようなパターンであれ、読み手は常にR1からR2に移動したいだけなので、何が既知の情報で何が未知の情報かを明らかにするだけで良い。
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フェーズ3:問題はなぜ存在するのか?
分析的問題解決:それぞれの要素を分析し、なぜそれが問題を引き起こすのかを明らかにする
科学的問題解決:その不一致を排除して結果を説明できると考えられる代替仮説を立てる
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STEP1:論点候補をできるだけ多くリストアップする
- ①複眼思考によって(視野・視座・視点・深さを変えて)論点候補の仮説を構築する
(1)視野
視野=見渡す角度の広さ。同じ階層でMECEになっているかどうか。
MECEの方法はSTEP2に書かれている。
(2)視座
視座=物事を俯瞰的に見る能力。視座を高める方法は以下の2通り。
(a)2つ上のポジションの立場で考える
(b)目的と手段を区別したり抽象化することによって、上位概念の論点候補や異なる論点候補を浮上させる
(3)視点
視点=着眼点やパラダイム。視点は主に次の6パターン
(a)逆から考える
・ゼロベースで考える(前提条件を疑う)
・制約発想と自由発想(様々な制約を設けてみたり外して、その条件で解決策を考える)
(b)他の立場から考える(業界最下位、現場、顧客、経営者、年代別、職業別、外国人、異業種、役職別、持たざる者、反対者、時代、地域、文化、依頼者の関心が薄い分野など)。キーワードは、「○○だったらどう考えるか」
(c)アナロジー(自然界や日常生活、他業界、業界内など。セレンディピティとも言える。抽象化が基本)
(d)時系列(長期的視野、時間の変化による論点の変化など)
(4)深さ
深さ=何段階目まで掘り下げられているか。なぜ5回で掘り下げる
- ②複眼思考以外で仮説を構築する
(1)突然のひらめき
(2)メモ書き
(3)会話(インタビューやディスカッションなど)
(4)フィールドワーク(現場を見る)
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STEP2:リストアップした論点候補を構造化する
- 構造
- 因果関係
①要素の構造
②R2に到達するために必要なタスクの構造
③R1を引き起こしている望ましくない活動の構造
- 分類
①類似性による分類
②選択肢による分類
③連鎖マーケティング構造による分類(②の発展形)
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STEP3 :論点の絞り込み
- イシュー度を見極める:絞り込みの基準
イシュー度は次の4つの基準によって設定される。
①解けるか解けないか
②解けるとして、実行可能か
③実行可能として、効果が見込めるか
④効果が見込めるとして、差別化が図れるか
以上の4つの基準に基づき、イシュー度を5段階で評価する。レベル3以下は解く必要のない論点であり、レベル4以上は解く必要がある論点。
レベル1:そもそも解けない論点
レベル2:解けるが実行できない論点
レベル3:解けるし実行もできるが、効果が見込めない論点
レベル4:解けるし実行もできるし効果が見込める論点
レベル5:解けるし実行もできるし効果も見込めるし他者と差別化が図れる論点
- 当たりをつけることによって論点の絞り込みを行う。当たりをつける方法は次の通りである。
①直観力ベース:既知のファクト(現象や観察事実)、経験、勘に基づいて、容易に消去できる論点候補から順に直観で消去していく。あるいは、「これだ」と思う論点を直観的に見抜く。
②論理力ベース:矛盾を見つけて論点候補を消去する。「もし〜だとしたら?」or「もし〜ではないとしたら?」と考える。これには2つの方法がある。
(1)因果関係:「論点を解くことによって直接的に結果が得られる」と確信するまで論点を批判的に捉える。これは、行動のステップで因果関係を言語化して論理的な飛躍がないかどうかを確かめれば良い。
(2)比較:条件を同一にして他の業界や企業、人と比較してみる
③リサーチベース:直観力を駆使しても論理力を駆使しても消去できない論点があった場合、詳細を知っていそうな人(専門家など)にインタビューしたり、問題の依頼者にインタビューしてみたり、誰かとディスカッションしてみたり、インターネットや文献を参照して絞り込む。
最初は直観力ベースで絞り込むが、直観で消去できないような判断の難しい論点は論理力を駆使して消去する。それでも判断できなければ、リサーチを行って絞り込む。もちろん、順序に決まりはないので臨機応変に絞り込むこと。
もし上記の方法でレベル4以上の論点が見つからない場合、STEP1に戻って新たな論点候補をリストアップせよ。
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STEP4:論点の検証
- ①現場に出て一次情報を得る
- ②頭の中の引き出しを参照する=類推による検証
●引き出しを活用する方法
(1)アナロジー:まず論点を類型化し、同様のパターンの事例を頭の中の引き出しから探す。自作の事例集、業界内や他業界で起きたこと、過去に経験したことを当てはめてみる。また、論点を身近な例に喩えてみるのもポイント。
(2)他の人の立場で見る:顧客視点(女子高生、主婦、男性社会人、子供など)、経営者視点、現場視点など。他人の視点で物事を見れるかどうかは、引き出しに関係がある
●引き出しを増やす方法
(1)前提として、日頃から問題意識をもってアンテナを張っておく必要がある
(2)アンテナに引っかかった問題を分野別に分類しておき、自分だけの問題集や事例集を作成する
結晶性知能が問題解決能力を高める。受験勉強と同様に、ストックが多いほど問題を解く能力が上がる。
- ③プロービング(対話)を行う
相手から与えられる論点と自分が考える論点が食い違うことがある(相手が考えている論点とSTEP2で絞り込まれた論点の食い違い)。そこで、質問(プロービング)を通して論点のギャップを探る必要がある。論点のギャップを探るためのアプローチは以下の3つである。
(1)質問を通して相手の話を聞く
(2)仮説をぶつけて反応を見る
- ④依頼主の真意を探る
相手の発言の真意やバックグラウンドを探って論点の筋の良し悪しを決定する。つまり、「論理面だけではなく感情面から見ても論点が正しいと言えるか?」を確認する。解決策に提案においては信頼関係が重要の役割を果たすので、相手から反論されても相手の意見を傾聴する。
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STEP5:大論点をサブ論点に分解して構造化する
- STEP1~4を経て大論点が決まったら、その大論点を構造、因果関係、分類の3パターンで中論点・小論点に分解していく。KGI、KPI、KDIのイメージ。この時、MECEに整理することにこだわる必要はない。穴あきのイシューツリーでも良いので、わからないところは?にしておいて先に進むようにする。
また、論点には大論点を検証する役割もある。論点を構造化し、自分がどこの論点について議論しているか、他人や反対者がどこの論点について議論しているかを地図化することによってマクロ的に検証することができる。さらに、大論点の根拠を明らかにして上位概念を浮かび上がらせることで新たな論点が浮かび上がる。
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フェーズ4:問題に対して何ができるか?
分析的問題解決:望んでいる結果をもたらす変更案を、論理的に系統立てて書いてみる
科学的問題解決:不適切な仮説を排除するための実験を行う
- 解決策の候補をできるだけ多くリストアップし、漏れなくダブりなく構造化する(穴あきのツリーでも良い)
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フェーズ5:問題に対して何をすべきか?
分析的問題解決:最も満足のいく結果をもたらすように、変更案を統合して新しい構造を作り上げる
科学的問題解決:実験から導かれた結果に基づいて理論を再構築する
- リストアップされた選択肢を絞り込む。
STEP1:資源(時間やお金、人材など)的に実行可能か。実行不可能な選択肢は真っ先に消去する
STEP2:実行可能である選択肢なら、各選択肢の利点、リスク、インパクトを評価する(表で整理すると良い)