映画タイトル
となりのトトロ
監督・原作・脚本
宮崎 駿
この映画のテーマ(一貫したメッセージ)
家族の愛 苦しいことや辛いことがあっても明るく生きていこう
構成
フック
明るいマーチングのオープニング曲から始まる。 『冒険』『探検』『わくわく』 色々な昆虫が出てきて、 楽しそうだな、と連想させるような印象
これから登場してくる”不思議な生き物(トトロやまっくろくろすけ)” が行進してきて、 「この生き物は何だろう?」と想像を掻き立てる。
子供、大人、 どの目線から見るかによっても印象が変わる。
子供だったら 「虫がいっぱいいて楽しそう!」
大人だったら 「懐かしいなぁ」 「うちの子供みたい」
昔懐かしい、田舎の田園風景から始まる。 時代背景も少し前?と推測できる 大きな、沢山の荷物を積み込んだ車が通りすぎる。
アップのシーンになると日用品が積まれていることが分かる。 鉱物、関東地方…と【本】の背表紙に書かれたものがぎゅうぎゅうに積まれている中、 後ろの荷台には仲のよさそうな姉妹がキャラメルを分け合っている。
「お父さん!キャラメル!」 「お、ありがとう」 「くたびれたかい?」 「ううん!」 「もうじきだよ」
「あ!めい、隠れてっ!」
「お巡りさんじゃなかった!おー--い!」 明るく、社交的な性格の女の子。 セリフから”お姉さん”という自覚もしっかりとついている。
容姿からは小学生ほどと予想されるが、発言や雰囲気から、しっかりした女の子だと この時点で分かる
遠くから【引っ越し】してきた。 しかし疲れを見せず、姉妹はワクワクした顔で外をのぞき込む
服装はきちんと整った、洋服を着ている。 都会から来たのか?
通り過ぎるバス、舗装されていないでこぼこ道、 木陰には祠(ほこら)もある。
広い田んぼ道にて車が停まる。 お父さんが道の途中の、一軒の家の前で、 家畜の世話?の手伝いをしている男の子に話しかける 「おうちの方はどなたかいらっしゃいませんか。」 無言で、男の子は田んぼの奥を指さす。 こちらの男の子は不愛想な雰囲気。
「日下部ですー!引っ越してきましたー!」 ご近所さんへご挨拶だろう。 「ご苦労さまですー!」
男の子の正面に画が切り替わると、後ろにはトタン屋根のような、簡素なつくりの家畜小屋が映る。
車の荷台から顔を出した、キラキラした顔の姉妹にびっくりする男の子。 恥ずかしいのだろうか、焦って自分の仕事に戻る。
車が過ぎ去ったあと、【引っ越し】してきたのが珍しいのか、きょとんとした顔で、また手を止め、目で車を追いかける。
男の子の身なりはタンクトップにズボンのお尻にはつぎはぎ、草履。 田舎で過ごしているのが分かる
お父さん「さあ着いたよ!」 めい「待ってー!」 お姉ちゃんを追いかけて走り出す。 まだ幼稚園に通うくらいの年齢の女の子
家の入り口の所に流れる川の水はとても澄んでいる。 小さな橋の上から眺め、泳ぐ魚を見つけた。 「どうだ?気に入ったかい?」 お姉ちゃん「お父さん、すてきねー!」
夏でも涼しげな木のトンネルを抜けると、 そこにはボロボロの家が。 「ボロー!」「ぼろー!」 「お化け屋敷みたい!」 「おばけ!?」 姉妹は楽しくなってはしゃぎまわる。
そして家のそばには大きな大きな楠(クスノキ)の木が立派に生い茂っていた。
運んできた荷物をお父さんと引っ越し屋さんふたりが家へ積み下ろす。 お姉ちゃんとめいは開けられた縁側から部屋を覗く。
するとそこにはどんぐりが落ちていた。 しかも何個も落ちている。 めいの頭上からも落ちてきたように思えて、上を見上げるが…何もない。
お父さんは「リスか、どんぐり好きなネズミでもいるのかな?」
お父さんに「さつき、裏の勝手口を開けて」 さつき「はーい」 手際よく南京錠を開けると… そこには正体がよく分からない…黒い何かが、壁を這うように逃げていった。 光が当たった瞬間『ぞわぞわ~~~!!』と 動き出した。
さつきとめいは驚きのあまり言葉を失う。 「ああああぁあああぁ!!」 「行くよ………」 勇気を振り絞って台所へ入る。 奥にはお風呂がある。
「お父さん、ここに何かいるよ」 「リスかい?」 「分かんない。 ゴキブリでもない、ネズミでもない、黒いのがいーっぱいいたの」 お父さんはお風呂の蓋を開けて中を見てみる。しかし何もない。
お父さん「こりゃ、まっくろくろすけだな」 さつき「まっくろくろすけ!?絵本に出てた?」 「こんないいお天気にお化けなんか出るわけないよ。 明るいところから急に暗いところへ入ると、目がくらんでまっくろくろすけがでるのさ。」
『まっくろくろすけ出ておいで~ 出ないと目玉をほじくるぞー♪』 (ぞわぞわ……。二人は気づいていない。) 『あははは……!』姉妹は面白くて笑った。
お父さんに「二階の階段はどこにあるでしょーうか?見つけて、窓を開けましょう~」 さつき「はーい!」 ”不思議な生き物がいるかもしれない家”とわくわくするさつきとめい。 喜んで部屋の中を探しに行く。
なかなか見つからない。 それでも”この家は何かいる”というワクワクで楽しい。
二階への階段を見つける。 しかし先は真っ暗。 「真っ暗だね」 「まっくろくろすけ…」 尻込みしていると、階段の上の方からどんぐりが落ちてきた。 『まっくろくろすけ出ておいでー!』 ぞわぞわ…… 何かいる。二人は感じた。
恐る恐る二階へ上がる。 「まっくろくろすけさん…いませんか…」 ぞわぞわ…… 『!』 さつきはダッシュで窓を開ける。 めいも追いかけるが、ふと気配を感じ、その方向に目を凝らす。
めいはじっ……と目を凝らしたまま。 怖いけど、興味がはるかに上回っている。 まっくろくろすけなのか……壁の隙間に手を入れてみると、ぞわぞわぞわ!! 一匹だけ落ちてきたまっくろくろすけと思われるものを”バチン!!”と捕まえた めい「取った!」
急いでお姉ちゃんに見せなきゃ! 下へ急ぐと、お隣のおばあちゃんが引っ越しのお手伝いに来てくれていた。 さつき「さつきに、妹のめいです。こんにちは。」 めいは人見知りでさつきのかげに隠れてしまう。 おばあちゃん「こんにちは。賢そうな子だよ~。急がなければ、家の手入れもしとったんだけども」
おばあちゃんとお父さんが話している間、めいは先程捕まえたまっくろくろすけを 手のひらを開いて確認するが…いない。
「めい、手まっくろじゃない!どうしたの?」 「まっくろくろすけ逃げちゃった。」 「あ、めいの足!」 いつの間にかさつきも、めいも、足まで真っ黒になっていた。
あばあちゃん「こりゃすすわたりがでたな」 「すすわたり?」 「ほんだ。だぁれもいねぇ古い家にいて、そこらじゅうすすと埃だらけにしてしまうんだ。 小さい頃にはわしにも見えたんが、あんたらにも見えたんけぇ」 おばあちゃんは嬉しそうに話す。
お父さん「それは妖怪ですか?」 「そんげな恐ろしいものじゃあねぇよぉ。にこにこしとれば悪さはしねぇ。 いつの間にかいなくなっちまうんだ。」 めい「めい怖くないもん!」
おばあちゃんは【小さい頃は見えた】とはっきり話している。 子供にしか見えない、不思議な生き物。
急な引っ越しだった
「お父さーん、やっぱりこの家なにかいるー!」 「そりゃあすごいぞ、お化け屋敷に住むのが父さんの夢だったんだ」
そんな引っ越しの荷下ろしで忙しくしている時、おばあちゃんの孫、かんたが お母さんから”渡してきなさい”と頼まれたものを持ってくる。 行きたいような、行きたくないような… 勝手口を覗き、様子を伺うとさつきとばったり会う。
かんた「かあちゃんが、ばあちゃんに。……ん!」 「やーい!お前んち、おっばけやーしきー!」
さつきには”からかわれた男の子”の第一印象になってしまった
「お父さんにもそんな覚えがあるなぁ」 懐かしいなぁとたわいもなく話す。
単純に気になる存在。 ついからかってしまう
家にはお母さんはいない。 お父さんは慣れない夕飯の支度をする。 さつきはそれを手際良く手伝う。
さつきはかまどに薪を足すのに外へ出る。 すると突風が起こり、びっくりする。 風がごぉー--!と喋っているみたいだった。
お風呂の時まで、風は強いままだった。
突風にお父さんも、姉妹もびっくり。 お父さん「あっはっは!笑ってみな、怖いものは逃げちゃうから」 そしてみんなで笑ってみた。
そんな中、まっくろくろすけの”引っ越し”が始まっていた。 楠の方へ向かっている。
日常
家事はみんなで分担してやっている。 この日は洗濯が終わったら、自転車に乗ってお母さんのお見舞いへ。
日下部家のお母さんは入院中。
おばあちゃん「お揃いでお出かけかーい」 さつき「お母さんのお見舞いに行くのー」 おばあちゃん「そらえらいよなー、よろしくゆっとくれー」
途中、自転車をこいでいるお父さんが道を間違いそうになるも、さつきがナビゲートする。
険しい山道を進み、やっと病院へ。 のどかな山奥にある病院。
めいはお母さんに抱きつき、 「お父さん道間違っちゃったんだよ~」とたまらず話し始める。
お母さん「みんな来てくれて嬉しいわ。新しいおうちはどう?」 さつきがお母さんににこにこしながら耳打ちする。 「えっ、お化け屋敷!?」 めい「お化け屋敷すき?」 お母さん「もちろん!早く退院しておばけに会いたいわ」 さつき「心配してたの。お母さんが嫌いだと困るなぁって」 めい「めい怖くないよ!」 お母さんは嬉しそうに話を聞いている。
めいの髪の毛をさつきが毎日きれいに結ってあげていることに、お母さんが気づく。
さつきにとって普段近くに【母親】がいない。 お母さんはさつきの髪をくしで整えてあげる
「相変わらずのくせっけね。私の子供の頃とそっくり」 「大きくなったら、私の髪もお母さんのようになる?」 「多分ね。あなたは母さん似だから。」
帰り道… さつき「お母さん、元気そうだったね」 お父さん「先生ももう少しで退院出来るだろうって言ってたよ」 めい「もうすぐって、明日~?」 さつき「まーためいの”明日~?”が始まった~」 3人は、お母さんが早く退院して 4人で過ごせる日を心待ちにしていた。
普段はしっかり者のさつきも、お母さんの前では甘えたい。 気持ちよさそうに髪をとかしてもらっている。
お母さんは、さつきに負担をかけていないか心配。 まだ小学生で、甘えたい盛りのはずだから。
お母さんも娘たちに会えて嬉しい。
ここでも【しっかり者】というのがうかがえる
あばあちゃんは日下部家の事情を知っている
田んぼ道でかんたとすれ違うも、お互い”あっかんべー”をする。
また新しい一日が始まる。 しっかり者のさつきは、今日から自分のお弁当を持っていくのでその用意をしていた。 一緒に、お父さん、めいの分のお弁当も用意しようと朝からパタパタと動いていた。
「これ、めいのね」 めいは自分のお弁当を受け取ると、目をキラキラさせて嬉しそう。
さつきは新しい小学校でもう友達が出来ていた。 朝、お友達が家まで来てくれたので 急いで支度をする。 「いってきまーす!」 『いってらっしゃーい』 お父さんとめいは支度の素早さにあっけにとられる。
めいはお父さんとお留守番。 「お弁当下げてどちらまで?」 「ちょっとそこまで♪」 めいはお弁当をもらって、おねえさん気分で嬉しい。 お父さんは執筆の仕事で机に向かう。
「お父さんお花屋さんね」 めいはひとりで遊ぶのにも慣れているよう。 お父さんの机の端に摘んできた花を並べてごっこ遊びをし始めた。 それを見たお父さんもアイディアが浮かんだのか、ペンを進ませた。
才能の種
めいはまだ小さい。自然の中にある様々なものに興味がある。 池を覗くと「おじゃまたくし!」 次は、バケツを見つけたが底抜け。穴から何か見えるかと覗いて、望遠鏡のようにして遊んでみる。
すると、どんぐりを見つけた。 バケツをそこらへんへ投げて、今度はどんどん見つかるどんぐり集めに夢中。
沢山集めたどんぐりを大事にポケットへ入れると…… 目の前に、白くて、見たことがない生き物が歩いている。 わくわくしながら後について行ってみる。
ついて行っていたら、突然消えた。 辺りをじっと見渡す。 また見つけ、追いかけるが、床下へ逃げ込まれ見失ってしまう。 覗くと、またいた。
しばらく覗いていたが出てこない… すると後ろからどんぐりが落ちる音が! 走って追いかける。 追いかけた先には、めいの身長でもかがんで入る程のトンネルのような所に 小さなふたつの生き物は入っていった。 この年齢の子は怖がることは全くない。 ワクワクしながらトンネルへと入っていった。
追いかけ、追いかけ、 大きな楠の場所に出た。 楠の根本に穴が開いていて、葉っぱの上にどんぐりが落ちていた。 取ろうとしたところ、滑ってしまい、コロコロと転げ落ちてしまった。
辿り着いた先には大きくて、ふわふわした生き物がすやすやと眠っていた。 尻尾を抱きしめたり、鼻をこちょこちょしてくしゃみをしたり……面白い。 「あなたはだぁれ?まっくろくろすけ?」 「とぉ、とぉ、ろぉー----!」 「あなた、”トトロ”っていうのね!」 全く怖がっていないめいに、トトロの方がきょとんとした顔を一瞬したが、 『まぁいいや』というような顔でまた眠りにつく。 めいも一緒になって眠くなってしまった。
この時、トンネルの入り口に帽子を落としていった
さつきが学校から帰ってきた。 お父さんは時間をすっかり忘れて仕事に没頭していた。
めいを呼ぶが返事がない。 近くにいない。 少し辺りを見渡すと、めいの帽子がトンネルの前に落ちていた。 さつきはトンネルを進むと、そこには眠っているめいだけがいた。
「こんなとこで寝てちゃダメでしょ!」 さつきは怒った。 「トトロは……?」 「トトロ…?」 「夢みてたの?」 「トトロいたんだよ!こぉーんなおっきいのが寝てた!」 めいは「こっち!」と道案内する。 が、一本道で、同じ場所に戻ってきてしまった。
「さっきは大きな木の所に行った」 信じてほしくて、もう一度トンネルを通ってみるが、同じ。 お父さんとさつきに笑われてしまった。 「ほんとにトトロ、いたんだもん!」
「ほんとにいたんだもん……」 「お父さんもさつきも、めいが嘘つきだなんて思っていないよ。 めいはきっと、この森の主に会ったんだ。それはとても運のいいことなんだよ。 でも、いつも会えるとは、限らない。」 めいは、はっ、とした顔でお父さんの話を聞いていた。
3人は家の傍に生えている、大きな楠に宿る神様へ挨拶に行くことにした。 めいはそこで転げ落ちた穴が塞がっていることに気づく。 「ね?いつでも会えるわけじゃないんだよ。」 さつき「私も会いたい。会える?」 「そうだな、運が良ければね。」 「立派な木だね。昔々、木と人は仲良しだったんだよ。」 めいがお世話になりました、と挨拶をし、家へと3人は戻った。
さつきはお母さんに手紙を書く。 「めいがトトロに会いました。 自分も会えたらいいなぁと思っています」
さつきがトトロに会えた日にも、お母さんに手紙を書いた。
『トトロからもらったどんぐりを庭に埋めたが、なかなか芽が出ない。 めいは毎日、まだ出ない、まだ出ない、と猿蟹合戦のカニのよう。』
お母さんは嬉しそうに手紙を読む。
今日はお父さんが大学へ行く日。 さつきはいつも通り学校へ。 家に誰もめいの面倒をみてくれる人がいなくなるため、隣のおばあちゃんの家で過ごすようにと、朝、さつきとめいは別れた。
しかし、まだ幼いめいは新しい土地や人に慣れていなかった。 さつきがふと校庭の入り口を見ると、そこにはおばあちゃんとめいが。
「いい子にしてたんだよ~?ねぇ?」 ぽろぽろ泣きながらさつきに抱きつくめい。 困ったさつきは、先生に頼んで、教室で一緒に過ごしていいかと話した。
二人で学校の帰り道、雨が降ってきてしまった。 道の途中のお地蔵様の屋根で雨宿りすることに
傘を持った、 通りがかったかんたが見かねて、 二人に無言で傘を渡してくれた。 かんたは『いいことをした』とにんまり嬉しそうな顔。
無事家に着く。 そろそろお父さんが帰ってくる時間だが、傘を持って行っていないことを思い出す。 迎えに行く途中、隣のかんたの家へ傘を返しに行き、バス停へ向かう。
しばらく待つが、なかなか帰ってこない。 森の中、ポツンと立つバス停は二人には寂しい。 めいも眠くなってしまい、さつきがおんぶする。
そこへ、トトロが隣にのっそのっそとやってきた。 「トトロ…?」 トトロは頭に葉っぱを乗せただけで、濡れている。 さつきはお父さんの傘をかしてあげた。
時々大粒の雫がトトロのさしている傘に”ボタボタッ!”と落ちる。 それが面白く、気に入ったようで、笑っている。 ”ドスン!!” トトロがジャンプし、地響きとともにザーー-っと雨が一気に落ちてきた。
「バスが来た」 ……そう思ったが、来たのは猫の姿をしたバス。 二人はあっけにとられる。 トトロは『お礼だよ』というように笹の葉に包んだ贈り物をくれ、そのままネコバスに乗り、お父さんの傘を持って あっという間に行ってしまった。
さつき「でた、出たの!」 めい「ねこ、ねこのバス!」 「会っちゃった、トトロに会っちゃった♪」 二人は興奮してお父さんに話す。
冒険
「お父さん、明日は芽出るかなぁ?」 「うーん、トトロなら知っているんだろうな」 「おやすみなさーい」 めいとさつきは芽が出るのはまだか、まだかと待ちわびながら、今日も眠りにつく。
満月の夜。 ふとさつきが夜中目を覚ますと、どんぐりを植えた所にトトロが。 お父さんの傘を持って、何かお祈りのような動きをしている様子。
側へ行って一緒にお祈りをすると、 なんと畑にまいた種が”ぽんっ!”と出てきた。 さつきとめいも一緒になって『うー--ん!』と同じ動きをしてみる。 ”ぽんっ!” 「わあぁ!」 どんどん、どんどん、どんぐりの芽は 家を覆うくらいの大木になった。
お祈りが終わると、トトロはコマに乗って空のお散歩へ行こうと誘ってくれた。 「めい!私たち、風になってる!」
しかし、朝起きて夢だったのか…と姉妹は少し落胆しながら起き、庭を見てみる。
するとどうだろう、 『夢だけど、夢じゃなかった!』 待ちわびた芽がひょこっと顔を出していたのだ。 二人は嬉しくて、昨夜トトロとやったお祈りを庭の周りでやり始めた。
その時、お父さんは書斎の机に向かっていた。 聞こえたか、聞こえなかったか… 分からないが、空の散歩が終わった後の心地よい風に乗って、オカリナの音が届いた気がした。
地獄へのきっかけ
今日はおばあちゃんの畑で野菜の収穫のお手伝い。 「おばあちゃの畑って、宝の山みたいね」 「おいしい!」 「お天道様いっぱい浴びてっから、体にもいいんだ」 「お母さんの病気にも?」 「今度、お母さんが家に帰ってくるの。退院じゃないけど、少しずつ慣らすんだって」 「めいが取ったとうもころし、お母さんにあげるの」 二人は嬉しそうに話す。
そんな時、電報が届く。 かんたが、日下部家が留守だからと預かり、畑まで届けてくれた。
「レンラクコウ シチコクヤマ」 病院からだ。 今日はお父さんの帰りが遅い。 しかし病院からの連絡をくれとの知らせ。 さつきは心がざわざわする。 めいもそれを察したのか、お姉ちゃんの挙動をじっと見る。
電話が無いため、かんたの親戚の本家へ案内してもらうことに。 さつきとかんたは急いで向かう。 しかしめいもとうもろこしを抱え、ついて行く。 「めいはおばあちゃんのところにいな!」 言うことを聞かず、懸命にさつき達を追いかける。
さつきは本家へ着き、お父さんのいる考古学研究所へ電話をかける。 お父さんも病院へ電話をしてみるとのこと。 連絡がくるまで待たせてもらうことに。
連絡が来た。 めいも本家から出てきたさつきを無事見つけたが… 連絡の内容は、お母さんの容体が良くない為、一時退院を伸ばすという連絡。 めい「やだ!!」 「無理して病気が重くなったらダメでしょう?」 しかしめいは「いやだ!」の一点張り。 さつき「めいのばか!もう知らない!」 さつきだって、お母さんが帰ってこれなくなったことが悲しいのだ。
さつきもめいも家に帰るが、放心状態。 おばあちゃんが大丈夫だよ、と励ましてくれるが、 さつき「この前も同じだったの。風邪みたいなものだって。お母さん、死んじゃったらどうしよう…」 一気に涙が込み上げてくる。
めいは一生懸命追いかけたが、さつきとかんたを少しの差で見失ってしまう。 迷子になってしまった。 「お母さんにあげるんだもん!」
地獄
おばあちゃんとさつきの会話を見ためいが、家を飛び出て走り出す。
そのうち、めいがいないことに気づく。 「めー--い!」 どこを探してもいない。 さつき「もしかして、病院へ行ったのかも!」 おばあちゃんはかんたへ、お父さんを呼んでくるよう伝える。一大事だ。
さつきは走って、走って、 道の途中にいた人にも、女の子が通らなかったか聞いてみる。 どこにもいない。 通りがかった車に乗るカップルにも聞いてみたが、見かけなかった、とのこと。
「さつきー!」 「かんちゃーん!」 お互い探していたが、めいはどこにもいない。 「さっき池でサンダルが見つかったんだ」 池まで急ぐ。 大人たちが池の中を総出で探していた。
さつきがサンダルを確認したら、めいのではなかった。
二人はもうすっかり友達になっていた
サンダルがすり減ってボロボロになるまで探した
天国へのきっかけ
さつきは最後の希望、トトロへお願いしに行くことを思い出す。 「お願い、トトロに会わせて。」 あのトンネルをくぐり、走り出す。
言葉が通じているのかいないのか、泣いているさつきを見てトトロは目をぱちくり。 そして嬉しそうな顔をした。 急に走り出し、大木のてっぺんで叫ぶ。 「おおおぉぉおお!!」 すると遠くから、風のように走ってくるネコバスが見えた。
天国
トトロはネコバスを呼んでくれたのだ。 さつきは恐る恐るネコバスに乗り込む。 ふかふかのねこの触り心地のいす。 ネコバスの行き先が【めい】になった。
「にゃー--お!!」 風のように走り出す。
「めーい!」 遠くからお姉ちゃんの声がする。 「おねえちゃーん!」
無事に再会できた。 ネコバスも嬉しそう。 「トウモロコシをお母さんに届けるつもりだったの?」 すると、ネコバスの行き先は【七国山病院】へと変わった。 「連れて行ってくれるの!?」
病院へはお父さんが行っていた。 お母さんは本当に”ただの風邪”だったよう。 「子供たち、心配しているかしら」 「あの子たち、見かけより、ずっと無理してきたと思うの。特にさつきなんかききわけが良いから。」
めい「お母さん笑ってるよ」 さつき「うん、大丈夫みたいだね」 姉妹はお母さんの顔を見て一安心。 めいの腕の中にはしっかりととうもろこしがある。
ふとお父さんが窓際においてあるとうもろこしに気づく。 「今、そこの松の木で、さつきとめいが笑ったように見えた。」 とうもろこしには【おかあさんへ】の文字。
おばあちゃんとかんたとも合流出来、家路につく。
エンディングでは お母さんが退院?し、 お母さん、さつき、めいの三人でお風呂に入るシーンが。
価値観
いつまでも子供の頃の純粋な心を大切にしたい。 大人にとっては何気ない日常・事柄でも、子供にとっては感情が大きく揺れ動くこと。
(この映画が制作されたのは1988年、となりのトトロの時代背景はもう少し前の時代?) 人と人は、助け合って生きていく。
それぞれが、大切な人を【想う】大切さ。 家族、兄弟、友達、隣人、同じ地域に住む人たち… 誰一人として大切に思われない人はいない。
このストーリーのなかで、仕込まれていた
「仕組み」(仕掛け)は?
明るいマーチングのオープニング曲から始まる。 『冒険』『探検』『わくわく』 色々な昆虫が出てきて、 楽しそうだな、と連想させるような印象
冒険
知らない世界
今や保育園や幼稚園、小学校など教育の現場でも使われている『さんぽ』という曲。 ちょうど主人公のさつきやめいと 同じ年頃の子供が楽しめるような映画である。
と同時に、同じ年頃の子供を持つ親御さん、 【子供の頃はこんな気持ちだったなぁ】お孫さんをもつ世代にも響く映画ではないだろうか。
探検
わくわく
楽しそう!
昆虫
広い田んぼ道にて車が停まる。 お父さんが道の途中の、一軒の家の前で、 家畜の世話?の手伝いをしている男の子に話しかける 「おうちの方はどなたかいらっしゃいませんか。」 無言で、男の子は田んぼの奥を指さす。 こちらの男の子は不愛想な雰囲気。
モブキャラでも良さそうなところをわざわざきちんと描写している。 =これからのお話の中でキーパーソンになる男の子、かんた。 かんたが手前、日下部家の乗ってきた車が奥、の構図。 =”かんた”を見せたい。
かんた【自分と同じくらいの歳の女の子だな…】→目が合うとちょっと恥ずかしいような、びっくりしたような顔。 さつき【あっ私達が住む家のお隣さんの男の子かしら】→これから始まる新生活のワクワクしたような顔。
何気ないシーンではあるが、それぞれの表情や息遣いのセリフからは、 これから始まるストーリーのひとつのキーポイントとなる そんな気持ちがうかがえる。
お父さんに「さつき、裏の勝手口を開けて」 さつき「はーい」 手際よく南京錠を開けると… そこには正体がよく分からない…黒い何かが、壁を這うように逃げていった。 光が当たった瞬間『ぞわぞわ~~~!!』と 動き出した。
これから始まる、不思議な出会いを連想させる描写。 静かなBGM、そーっと動くさつきとめい。 わざわざゆっくりと時間を使っている。 まっくろくろすけも、『ざわざわ~!』とうごめく描写が、ひとつひとつ丁寧に描かれている。
観ている視聴者側も、”一体今のは何なのだろう?”と 物語に入り込んでしまう、入り込ませる、 監督のこだわったシーンのひとつなのではないだろうか。
さつきはかまどに薪を足すのに外へ出る。 すると突風が起こり、びっくりする。 風がごぉー--!と喋っているみたいだった。
さつきの表情は、【なにか、神様が怒っている?伝えようとしてる?】というような 風=神様、のような描写。
家の隣の楠も風が吹いたタイミングで一緒に描かれているので、 さつきは”この大木に何かがある”、と思っているような受け取り方も出来る。
二人で学校の帰り道、雨が降ってきてしまった。 道の途中のお地蔵様の屋根で雨宿りすることに
偶然かもしれないし、それは定かではないが、 大きな楠にいる神様=トトロ が住んでいるこの村の、点在する”守り神”として描いたのでは?
なので急な雨もトトロが降らせた?
そのあとの、傘を持っていないお父さんを迎えに行く伏線に繋がる。
さつきもめいも家に帰るが、放心状態。 おばあちゃんが大丈夫だよ、と励ましてくれるが、 さつき「この前も同じだったの。風邪みたいなものだって。お母さん、死んじゃったらどうしよう…」 一気に涙が込み上げてくる。
さつきは普段からお母さんが家におらず、母親代わりとして家事などこなし、しっかり者。 まだ小学生ではあるが、お母さんの病気(結核)のことを少なからず把握していて、 (冒頭、引っ越してきた大きな理由のひとつが”お母さんが山奥の病院へ入院している”から) 【しっかり家事や、家の手伝いをするんだ】という反面、 【お母さんはいつか病気が治って、家に帰ってくるんだ】 二つの気持ちが矛盾し、 思わず号泣してしまったのではないか?
いつもしっかりしていて笑顔の絶えないお姉ちゃんが号泣している。 そんな姿を見て、めいなりに 【これはおうちの一大事だ】と 察したのでは。
めいだってお母さんがいなくなっては困るし、悲しい。 おばあちゃんがくれた”元気になるとうもろこし”をお母さんに食べさせれば、きっとおうちにも帰ってきてくれるし、お姉ちゃんも泣かないで、いつもの笑顔に戻ってくれる。 めいなりの、【自分が今出来ることはこれだ】と考えた。
おぼろげな記憶を頼りに、病院へ走り出す。
さつきは走って、走って、 道の途中にいた人にも、女の子が通らなかったか聞いてみる。 どこにもいない。 通りがかった車に乗るカップルにも聞いてみたが、見かけなかった、とのこと。
ただ走って探す。 どこにもいない。 時間は刻一刻と過ぎていき、景色も夕方の空模様に変わっている。 =時間の経過を伝えている。
サンダルがすり減ってボロボロになるまで探した
同じく、時間の経過を表す。
「理由のトリガー」は?
家の入り口の所に流れる川の水はとても澄んでいる。 小さな橋の上から眺め、泳ぐ魚を見つけた。 「どうだ?気に入ったかい?」 お姉ちゃん「お父さん、すてきねー!」
日下部家の服装、言葉遣いなど 都会からわざわざ山奥の家へ引っ越してきた。
のちに登場するお母さんが、結核のため、山奥の病院に入院していて、 その近い距離へ越してきた。
お父さん「こりゃ、まっくろくろすけだな」 さつき「まっくろくろすけ!?絵本に出てた?」 「こんないいお天気にお化けなんか出るわけないよ。 明るいところから急に暗いところへ入ると、目がくらんでまっくろくろすけがでるのさ。」
科学的には『急に暗い所に行くと目が眩む』 と分かっているし、 絵本にも実際子供が分かり易く描かれていた、と描写している。
しかし、メインの視聴者はめいやさつきと同じくらいの”こども”。 ”おばけ”や”不思議なもの”はいる。 本当にまっくろくろすけがいたかもしれないし、いなかったのかもしれない。 トトロが出てくる伏線の役割も果たしている(?)ため、 【ちょっと怖いけど面白そう】なトーンで描かれている。
お父さんは【子供の言っていること】のような、 半分信じて、半分信じていないような そんな素振り。
めいはまだ小さい。自然の中にある様々なものに興味がある。 池を覗くと「おじゃまたくし!」 次は、バケツを見つけたが底抜け。穴から何か見えるかと覗いて、望遠鏡のようにして遊んでみる。
生きていて、身の回りすべてが興味の対象の年頃。 大人が気づかないような(もしくは当たり前になってしまっている)視点で昆虫や、植物、 子供は沢山のものを見つけ出す天才。
「いい子にしてたんだよ~?ねぇ?」 ぽろぽろ泣きながらさつきに抱きつくめい。 困ったさつきは、先生に頼んで、教室で一緒に過ごしていいかと話した。
わくわく、ドキドキの気持ちで新しい土地に引っ越してきた。 が、めいはまだ小さく、急に新しい土地、人、環境に慣れるのには大人よりも時間がかかる。
そのあとバス停に出てくる、トトロは めいをあくまで”心の中”で『助けてくれる存在』
しばらく待つが、なかなか帰ってこない。 森の中、ポツンと立つバス停は二人には寂しい。 めいも眠くなってしまい、さつきがおんぶする。
二人、暗く静かな森の中でお父さんを待つ。 しとしとと降る雨の音さえも不気味に感じるのではないだろうか。 もしここに『お母さん』がいたら、三人で楽しく待っているかもしれない。
子供達だけ。トトロが出てきそうなトリガー
「お父さん、明日は芽出るかなぁ?」 「うーん、トトロなら知っているんだろうな」 「おやすみなさーい」 めいとさつきは芽が出るのはまだか、まだかと待ちわびながら、今日も眠りにつく。
お父さんは、本当に子供達がトトロに会ったのか、どんぐりをもらったのか、 信じているようにも見える(セリフから読み取れる)し、ただの”錯覚”、というふうに考えているのか どちらにも考えることが出来る。
【どんぐりからきっと芽が出る】 二人はトトロに会っているから、そう確信している。
その夜、実際は夢だったのかもしれないが、 しかしここでもトトロは来てくれた。
今日はおばあちゃんの畑で野菜の収穫のお手伝い。 「おばあちゃの畑って、宝の山みたいね」 「おいしい!」 「お天道様いっぱい浴びてっから、体にもいいんだ」 「お母さんの病気にも?」 「今度、お母さんが家に帰ってくるの。退院じゃないけど、少しずつ慣らすんだって」 「めいが取ったとうもころし、お母さんにあげるの」 二人は嬉しそうに話す。
二人は、 ・早くお母さんが退院して欲しい(元気になって、家に戻ってきて欲しい) ・お父さんと3人で頑張って生活しているよ という事を おばあちゃんの野菜の収穫を通じて伝えたかった
「共感のトリガー」は?
さつきとめいは驚きのあまり言葉を失う。 「ああああぁあああぁ!!」 「行くよ………」 勇気を振り絞って台所へ入る。 奥にはお風呂がある。
自分が知っている世界の中では分からない所、事柄、モノ。 弟(2学年下)がいるが、一緒に探検したり、遊んだり、小さい時の楽しい記憶が蘇った。
さつきはかまどに薪を足すのに外へ出る。 すると突風が起こり、びっくりする。 風がごぉー--!と喋っているみたいだった。
ただの自然現象だが、子供心には【神様が怒っている】(もしくは笑っている時も)と感じる。 自分の力ではどうしようもない→両親に甘えたい、助けてほしい、そばにいて欲しい。
さつきもめいも家に帰るが、放心状態。 おばあちゃんが大丈夫だよ、と励ましてくれるが、 さつき「この前も同じだったの。風邪みたいなものだって。お母さん、死んじゃったらどうしよう…」 一気に涙が込み上げてくる。
小さい時、母はほぼワンオペ状態+義母の世話でとても忙しく、心も休まる時間は無かったと思う。 父は子育てに無関心、義母からのいびり… 夜家を抜け出して、実家に帰るが「帰った方がいい」と追い返される始末。
熱を出し、風邪をひいて身体がしんどくても、自分たちのご飯の支度や、世話をしてくれた。 今思えば、「ママやるから」と拒否されても手伝うべきだったのでは?と後悔してしまうような… しかし当時、手伝うことによって余計な仕事を増やしてしまうのではないか? という葛藤や不甲斐なさも混じっていたように思う。
私が3才の頃、祖父は心臓の大きな病気を患い、何時間もかかる手術は成功したが、以来沢山の種類の薬を服用しているのを目にしていた。 高校生の時、祖父の病気が再発し、学校が終わるとすぐに大学病院へ一人で向かった。 おじいちゃんっ子だったので、 ICUで眠っている、管が沢山繋がれた祖父を見て苦しい気持ちで心が張り裂けそうになったのを 今でも覚えている。
「内的独白」は?
さつきは新しい小学校でもう友達が出来ていた。 朝、お友達が家まで来てくれたので 急いで支度をする。 「いってきまーす!」 『いってらっしゃーい』 お父さんとめいは支度の素早さにあっけにとられる。
新しい生活はとても楽しい。 今までと違う(良い暮らしをしていた都会から来たので)周りの世界、友達、 入院はしてしまったが、お母さんには自転車で会いに行ける。
反面、【お姉ちゃんなんだからしっかり母親代わりをするんだ】 という、『私楽しいの!』と表では隙を見せず、裏の【お母さんに沢山甘えたい】気持ちは押さえつけているようにも見える。
連絡が来た。 めいも本家から出てきたさつきを無事見つけたが… 連絡の内容は、お母さんの容体が良くない為、一時退院を伸ばすという連絡。 めい「やだ!!」 「無理して病気が重くなったらダメでしょう?」 しかしめいは「いやだ!」の一点張り。 さつき「めいのばか!もう知らない!」 さつきだって、お母さんが帰ってこれなくなったことが悲しいのだ。
二人とも待ちわびた『お母さんの一時退院』。 この時の為に、二人は毎日笑顔で頑張っていた。 気持ちのやり場が無い。
さつきは笑顔でお母さんを待つ気力を失くしてしまった。 めいも、おばあちゃんの畑でとれた野菜を一緒に食べようと思っていたのに、ただただ悲しい。
さつきは走って、走って、 道の途中にいた人にも、女の子が通らなかったか聞いてみる。 どこにもいない。 通りがかった車に乗るカップルにも聞いてみたが、見かけなかった、とのこと。
【私がしっかり見ていなかったから】 【めいがいなくなったことをお父さんやお母さんになんて言えばいい?】 【お姉ちゃん失格かもしれない】 【どこにもいない…どうすればいい?】 不安、不甲斐なさ、悲しさ、 色んな感情が表情で表現されている。
各シーンで自分の人生とリンクしたシーンは?
「お父さん!キャラメル!」 「お、ありがとう」 「くたびれたかい?」 「ううん!」 「もうじきだよ」
そのときなにがあったか?
小さい頃、食べようとしたおやつが私・弟・(母)の人数に対して量が少なかった
どんな場面だった?
弟や母におやつを分けてあげたりしていた。
そのときなにを感じていた?
深くは考えていなかった(子供なので複雑な感情は持っていなかったと思う)が、 ”(喜んでもらえて)嬉しい気持ち”があった。
自分の分は減ってしまうが、それよりも喜んでもらえる、という気持ちが勝っていた。
そのときどうした?
なるべく綺麗に半分になるよう分けた
そのときの行動が、その後じぶんにどんな影響を与えた?
【お姉ちゃんだからしっかりしないといけない】と ”自分よりも他人を”、という (自分を犠牲にしてまで、とまではいかないが)気持ちを大切にするようになった。
今のあなたが再解釈すると、どう感じますか?
物心つく前から「お医者さんになりたい」と話していたのは、 無償の愛?のような、【人のために役に立ちたい】という性格が自分の中にあったのだろうか
「相変わらずのくせっけね。私の子供の頃とそっくり」 「大きくなったら、私の髪もお母さんのようになる?」 「多分ね。あなたは母さん似だから。」
そのときなにがあったか?
母と父は離婚する、しない、と そもそも結婚当初から問題があったようで、仲が良くないのを間近で見てきた (婿養子に入るとの話だったのに、全然話が違うし、母側の家族からしたら”常識”が無いなど、意見の相違が多数あったよう)
どんな場面だった?
(特定の場面ということはないが)母が父を生理的にも、性格的にも嫌っていたので、【父に似たくはない】と強く思っていた。 性格、体型、容姿、学歴… 全てにおいて頻繁に「ママにそっくりね」 逆に「どうしてパパにそっくりなの!」 常々言われていた。
そのときなにを感じていた?
【どうして仲良くないのだろう?】と初めは思っていた。大きくなるにつれ、ぽつぽつと父との結婚のことを話してもらい、【嫌い、父のようにはなりたくない】という感情が生まれていた。
そのときどうした?
だんだん父とは距離を取るようになっていった
亡くなった時には結婚したことも、子供がいることも話さず、 葬儀も親族間でいざこざがあり、 落ち着いてから墓前に挨拶に行くだけになった。
そのときの行動が、その後じぶんにどんな影響を与えた?
【父のような常識が無い人とは結婚したくない】 それは逆に自分の考えを押し付けて、交際相手を探していたのだろうか? そうしたら私はとんでもなく相手からしたら”嫌な女”としか映らなかったのでは?
今のあなたが再解釈すると、どう感じますか?
今考えると(両親とも)毒親だったと思う。 母から”(母の思っている)一般常識”を教えてもらったことによって助けられた場面は沢山あるが、 夫と話したりしていると”それは俺が育ってきて教えてもらったことと違う”と言われることが多々ある。
結果的には【母親みたいになりたくない】
さつきもめいも家に帰るが、放心状態。 おばあちゃんが大丈夫だよ、と励ましてくれるが、 さつき「この前も同じだったの。風邪みたいなものだって。お母さん、死んじゃったらどうしよう…」 一気に涙が込み上げてくる。
いつもしっかりしていて笑顔の絶えないお姉ちゃんが号泣している。 そんな姿を見て、めいなりに 【これはおうちの一大事だ】と 察したのでは。
めいだってお母さんがいなくなっては困るし、悲しい。 おばあちゃんがくれた”元気になるとうもろこし”をお母さんに食べさせれば、きっとおうちにも帰ってきてくれるし、お姉ちゃんも泣かないで、いつもの笑顔に戻ってくれる。 めいなりの、【自分が今出来ることはこれだ】と考えた。
そのときなにがあったか?
祖父が心臓の病気の、大きな2回目の手術をした
どんな場面だった?
私が小さい頃(記憶にない)した手術も長時間の大手術だったと聞いたり、 祖父の心臓付近の痛々しい傷跡をこの目で見て【ものすごく大変な病気の手術だったんだな】と 知っていたので、 「おじいちゃんが倒れた」と連絡をもらった時は胸騒ぎが止まらなかった。
そのときなにを感じていた?
さつきと全く同じように、【大好きなおじいちゃんが死んじゃったらどうしよう】 という言葉が頭から離れなかった。
そのときどうした?
当時高校生だった私は、連絡をもらい、学校からすぐに病院へ向かった。
そのときの行動が、その後じぶんにどんな影響を与えた?
普段から祖父母とお茶を飲みながら会話するのが好きだったが、 【もしかしたら会えなくなる日は近いのかも】と考えたくはなかったが、 会いに行ったり、会話したり、何気ない時間をもっと大切にしようと思った。
今のあなたが再解釈すると、どう感じますか?
人はいつか天国へ行ってしまう。 結婚して、ひ孫を見せることが出来て、おじいちゃん孝行は十分に出来たのではないかと思う。 きっと祖父も天国で私の仕事を応援してくれているのではないかと思う。
登場人物像/役割
日下部 父
さつき、めいの父親。
子供たちの母親が入院している分、仕事をしながら家事・育児も父親なりに頑張っている。 仕事で子供たちの面倒が見れない時は、お隣のあばあちゃんに助けてもらっている。
「今日からお弁当なの!」 「あっしまった、すっかり忘れてた…」 と学校の予定を忘れてしまっていたり、 病院へ向かう道を間違えそうになったり… 少しおっちょこちょいな部分もある。
子供達が「トトロいたんだよ!」と 大人になると到底信じられないような出来事を聞かされても 「嘘をついているとは思わないよ」と 優しく包み込んでくれるような存在。
大学に勤めている。考古学専攻。
日下部 母
さつき、めいの母親。
結核で山奥の隔離された病院に入院中。
さつきの、家事のテキパキとこなす姿から、 入院生活が長い?
娘たちのことが大好きで、大切に思ってくれている、優しいお母さん。
お父さん・さつき・めいの3人でお見舞いに来てくれた時は 「めいの髪の毛、さつきが結ってくれてるの?上手よー」 「さつき、ちょっと髪短くない?ほら、こっち来なさい」 さつきの髪の毛をとかしてあげたり ”優しいお母さん”。
一方で、自分が入院していることによってさつきやめいが不安になったり、寂しがったりしていないか心配。
日下部 さつき
小学校に通う、とても明るくお転婆な女の子。 ショートヘアーが性格とも合っていて良く似合っている。
転校先の小学校ではすぐに友達を作れたり、社交的な面もある。
家では、母親が入院している為、 まだ幼いめいの面倒や、仕事で忙しい父親に代わって家事をテキパキとこなす。
しっかり者だが、かといってもまだ小学生。 【早く家族4人で生活したい】 そんな”甘えたい”という気持ちが伺えるシーンもある。
日下部 めい
幼稚園(年少~年中?)に通うくらいの、さつきの妹。 お姉ちゃんによく似て、めいも明るくてお転婆。
「おじゃまたくし!」 「このバケツ、穴あいてるー!」 よくこんな子、いるよねという感じの女の子。 なんにでも興味津々。
初めてトトロに出会うのがめい
トトロ
正体は定かではないが、さつき達が暮らす、 家のそばに大きく自生する楠がある森の神様
突然さつきやめいの前に現れ、 トトロ自身が【楽しかったよ、ありがとう】とでも言ったのか、どんぐりや木の実をくれたり、 最後はさつきとめいを、ネコバスを呼んで助けてくれた。
トトロ・小、中
めいが最初に見つける、トトロの子供?のような、トトロよりサイズの小さい神様。
めいが庭で遊んでいたそばでどんぐり拾いをしていた。 まだ半人前なのか、人間には見えないよう透明になっていたつもりが、身体がうっすら透けてしまっていたところを めいに見つかってしまい、追いかけっこする羽目に。
結果、めいはトトロに出会う。
ネコバス
トトロが「うおぉぉぉおぉ!」と叫ぶと、どこからか風と一体となって現れるネコの姿をしたバス。
ラストのシーンでは、さつきとめいを見てにっこりと笑い、お母さんの病院まで連れて行ってくれる。
隣の家のおばあちゃん
笑顔の素敵な優しいおばあちゃん。 日下部家の隣に住んでいる為、引っ越してくる前は家の手入れをしていてくれていた。
「そぉかぁ、(すすわたり)見たんけぇ」と さつきとめいが見たというおばけの正体を知っている。 昔、おばあちゃんがまだ小さかった頃は自分の目でも見たことがある、と言っている。
農家のおばあちゃんが育てている野菜畑から採れた、「野菜を食べれば、お母さんもきっと元気になるよ。」 とさつきとめいを優しく励まし、見守ってくれている。
(隣の家・おばあちゃんの孫)かんた
さつきの家の隣に住む。おばあちゃんの孫。クラスメイトでもある。
さつきが越してきた時、初めは【あんな都会っ子、好かん】とでもいうような素振りだったが、 本当は一目惚れ?していた。 学校でも先生の目を盗んでさつきを目で追ったりしていた。
急な雨で困っているさつきとめいに傘を貸してあげたり、 ラストシーン、かんたも必死にめいを探してくれた。 本当は素直でとてもいいやつ。
みっちゃん
さつきの小学校の友達。 転校後すぐに仲良くなり、朝一緒に登校するくらい仲良し。
気に入ったセリフ
家の入り口の所に流れる川の水はとても澄んでいる。 小さな橋の上から眺め、泳ぐ魚を見つけた。 「どうだ?気に入ったかい?」 お姉ちゃん「お父さん、すてきねー!」
夏でも涼しげな木のトンネルを抜けると、 そこにはボロボロの家が。 「ボロー!」「ぼろー!」 「お化け屋敷みたい!」 「おばけ!?」 姉妹は楽しくなってはしゃぎまわる。
『まっくろくろすけ出ておいで~ 出ないと目玉をほじくるぞー♪』 (ぞわぞわ……。二人は気づいていない。) 『あははは……!』姉妹は面白くて笑った。
かんた「かあちゃんが、ばあちゃんに。……ん!」 「やーい!お前んち、おっばけやーしきー!」
突風にお父さんも、姉妹もびっくり。 お父さん「あっはっは!笑ってみな、怖いものは逃げちゃうから」 そしてみんなで笑ってみた。
お母さん「みんな来てくれて嬉しいわ。新しいおうちはどう?」 さつきがお母さんににこにこしながら耳打ちする。 「えっ、お化け屋敷!?」 めい「お化け屋敷すき?」 お母さん「もちろん!早く退院しておばけに会いたいわ」 さつき「心配してたの。お母さんが嫌いだと困るなぁって」 めい「めい怖くないよ!」 お母さんは嬉しそうに話を聞いている。
帰り道… さつき「お母さん、元気そうだったね」 お父さん「先生ももう少しで退院出来るだろうって言ってたよ」 めい「もうすぐって、明日~?」 さつき「まーためいの”明日~?”が始まった~」 3人は、お母さんが早く退院して 4人で過ごせる日を心待ちにしていた。
めいはお父さんとお留守番。 「お弁当下げてどちらまで?」 「ちょっとそこまで♪」 めいはお弁当をもらって、おねえさん気分で嬉しい。 お父さんは執筆の仕事で机に向かう。
「さっきは大きな木の所に行った」 信じてほしくて、もう一度トンネルを通ってみるが、同じ。 お父さんとさつきに笑われてしまった。 「ほんとにトトロ、いたんだもん!」
「ほんとにいたんだもん……」 「お父さんもさつきも、めいが嘘つきだなんて思っていないよ。 めいはきっと、この森の主に会ったんだ。それはとても運のいいことなんだよ。 でも、いつも会えるとは、限らない。」 めいは、はっ、とした顔でお父さんの話を聞いていた。
『トトロからもらったどんぐりを庭に埋めたが、なかなか芽が出ない。 めいは毎日、まだ出ない、まだ出ない、と猿蟹合戦のカニのよう。』
さつき「でた、出たの!」 めい「ねこ、ねこのバス!」 「会っちゃった、トトロに会っちゃった♪」 二人は興奮してお父さんに話す。
今日はおばあちゃんの畑で野菜の収穫のお手伝い。 「おばあちゃの畑って、宝の山みたいね」 「おいしい!」 「お天道様いっぱい浴びてっから、体にもいいんだ」 「お母さんの病気にも?」 「今度、お母さんが家に帰ってくるの。退院じゃないけど、少しずつ慣らすんだって」 「めいが取ったとうもころし、お母さんにあげるの」 二人は嬉しそうに話す。
あなたの人生のなかで、今の自分に影響を与えていたと感じるセリフを思い出しましたか?
父
母
お父さんに「二階の階段はどこにあるでしょーうか?見つけて、窓を開けましょう~」 さつき「はーい!」 ”不思議な生き物がいるかもしれない家”とわくわくするさつきとめい。 喜んで部屋の中を探しに行く。
子供の頃、こんな風なやりとりが母とあったような。 お母さんといると楽しい。私も将来こんなお母さんになりたい、と自然と思っていた。
「相変わらずのくせっけね。私の子供の頃とそっくり」 「大きくなったら、私の髪もお母さんのようになる?」 「多分ね。あなたは母さん似だから。」
これも、同じようなやり取りが母とあったなぁと覚えている。 【こんな女性・母親になりたい】と思った。
兄弟
後輩的な人
先輩的な人
師匠的な人
あばあちゃん「こりゃすすわたりがでたな」 「すすわたり?」 「ほんだ。だぁれもいねぇ古い家にいて、そこらじゅうすすと埃だらけにしてしまうんだ。 小さい頃にはわしにも見えたんが、あんたらにも見えたんけぇ」 おばあちゃんは嬉しそうに話す。
おばあちゃんの会話を聞くと、昔話を嬉しそうに話す祖父母を思い出した。
自分よりもたくさんのものを見て、経験してきた祖父母の話はとても興味深く、 面白い。 半世紀生きている時代が違うだけで、こんなにも見る世界は違うのかと 驚きもあった。
出会ったこと・もの
監督がもっとも力を入れたと感じるシーン
どのシーンか?
言葉が通じているのかいないのか、泣いているさつきを見てトトロは目をぱちくり。 そして嬉しそうな顔をした。 急に走り出し、大木のてっぺんで叫ぶ。 「おおおぉぉおお!!」 すると遠くから、風のように走ってくるネコバスが見えた。
トトロはネコバスを呼んでくれたのだ。 さつきは恐る恐るネコバスに乗り込む。 ふかふかのねこの触り心地のいす。 ネコバスの行き先が【めい】になった。
どんなシーンか?
初めはただのおばけのような、神様のような、不思議な存在でしかなかった。 しかし、めいが迷子になり、 さつきは【最後の頼み…トトロと会えれば助けてくれるかもしれない】 そしてあっという間にめいと再会出来た感動のシーン。
なぜそう感じたか?
ラストシーン、ネコバスが風のように駆けていくように、 トトロとネコバスがあっという間に さつきとめいを助けてくれた。
ここまでのいくつものトリガーがあってこそ、この爽やかな、駆け抜ける感動のシーンがとても活きて、 【いい映画だった】と思わせてくれる。
BGMも、明るく、颯爽と駆け抜けるような印象。