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アナウンス
- 5月12日(第4回)所有権(1)
対面講義
- 今日の学習範囲:教科書Sシリーズ13〜20ページ(+315〜31ページ)
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物権的請求権とは?
意義、要件・効果(内容)
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意義
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物権の直接支配性・絶対性・排他性
- 「物権のあるべき状態を回復・維持」する権利
「物権を物権たらしめる」権利
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根拠条文の不在
なぜ?(理論的根拠)
- 占有の訴え[占有訴権](197〜202条)
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仮の権利(暫定的な保護しか与えられない権利)である占有権にすら認められているのであれば、本権ならば当然のこと
- 起草者は自明のことを条文化しなかった例のひとつ
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物権的請求権の種類
- 占有の訴えの種類に準じて整理される
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①占有回収の訴え(200条、201条3項)
- 物権的「返還」請求権
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②占有保持の訴え(198条、201条1項)
- 物権的「妨害排除」請求権
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③占有保全の訴え(199条、201条2項)
- 物権的「妨害予防」請求権
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要件・内容
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返還請求権
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物権者の占有喪失
- 目的物の返還
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妨害排除請求権
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物権内容の実現の妨害
- 妨害の排除
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妨害予防請求権
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物権侵害のおそれがあること
- 妨害原因の除去
損害賠償の担保
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特徴的なこと
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物権的請求権の成立には、客観的に物権の実現が妨げられている不適法な状態又はそのおそれがあれば足り、侵害者や侵害を生じさせるおそれがある者に故意又は過失があることを要しない。∵本来あるべき状態を回復することに意義があるから
- 不法行為に基づく損害賠償請求権の要件との違い
- あるべき状態の回復という意味では、不当利得返還請求権と機能を同じくするが、不当利得返還請求の場合、妨害の予防までは請求できない
- 損害(不法行為)や損失(不当利得)の発生も要件とされない
- 債権は消滅時効にかかるが、物権的請求権は、所有権などその基礎となる権利が存在する限り、消滅することがない(大判大正 11•8•21⺠集1巻493頁)
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行使の相手方
- 実質的な所有者と登記名義人とがズレているとき
- 基本事例
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Aは、甲土地の所有権に基づいて物権的請求権を行使する際、C(実質的所有者)を相手(被告)にすべきか、B(登記名義人)を相手にすべきか?
- 最判平成6•2•8民集48巻2号373頁
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原則:実質的所有者
- 具体的にどのようなケースで、登記名義人に対する請求が棄却されるのか
- 平成6年判決が挙げる昭和35年判決・昭和47年判決
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例外則:「特定の場合に」、登記名義人への請求「も」認められる
- 例外的場合の限定
- 2つの論拠
- 判旨の論理構造をしっかりと押さえることが重要!
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法的性質論と費用負担
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基本事例
- 単純化すると…
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物権的請求権の「衝突?」現象
- そもそも物権的請求権は、「だれが(原告)」「だれに(被告)」「どのようなことを(内容)」請求する権利なのか?どちらが「費用負担」するのか?
ー法的性質論
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行為請求権説
- やってよ!(積極的な行為)を請求する権利であり、請求の相手方(被告)が費用を負担する
- 早い者勝ちになってしまう
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忍容請求権説
- こちらでやるから我慢してね!立ち入るのを許してよ!と請求する権利であり、請求する側(原告)が費用を負担する
- いずれの側も請求しない両すくみの状態になってしまう
- 責任説
- 費用折半説
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衝突を回避する最近の見解
- 物権的請求権が衝突するという前提を否定し、目的物の性質や取引上の危険配分から、どちらが侵害者かを決めればよく、そうすれば物権的請求権の衝突や併存は生じない
- 場所的移動により侵害状況を生じさせる危険 動産>不動産
- 返還請求権が生じるためには、相手方が物を占有(180条)=自己のためにする意思をもって所持していることが必要である
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その他の物権では
- 特殊な議論状況を示すのが「抵当権」に基づく場合である
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非占有担保、伝統的に「価値権」と把握
- 抵当権実行前の段階で、抵当権に基づく物権的請求権の行使は認められるのであろうか