1. キーワード
    1. 産業動物
    2. 消化管内マイクロバイオータ
    3. ディスバイオーシス
    4. 臓器連関
  2. 背景
    1. ① 近年、医学領域で腸内細菌叢の破綻(Dysbiosis)が消化器疾患のみならず、さまざまな臓器の疾病発生に関与していることが報告されている。
      1. 肥満(Nature. 2006 Dec 21;444(7122):1027-31)
      2. HCV (Clin Infect Dis. 2018 Aug 31; 67(6):869-877)
      3. 糖尿病
      4. 歯周炎
      5. 膵がん
      6. 肝がん
      7. アルコール性肝障害
      8. アレルギー性気道炎症
      9. 糸球体腎炎
      10. 全身臓器での疾病発生には腸内細菌が産生した代謝物が媒介していることが明らかとなっている。
    2. ② Dysbiosisを起こした腸内細菌叢を正常に近づけることで疾病制御する治療法が実用化されている
      1. プロバイオティクス
      2. プレバイオティクス
      3. オールバイオティクス
      4. 腸内細菌カクテル
      5. 便微生物叢移植
      6. 難治性慢性疾患に対する非侵襲的かつ効果的な治療あるいは予防が実現可能となる
    3. ③ 獣医学領域でも腸内細菌叢を介した治療法に注目が集まっている。
      1. ヒトと異なり、ウシをはじめとした前胃発酵動物やウマなどの後腸発酵動物は消化管内で発酵を行い、より複雑な消化管内マイクロバイオータを構成している。
      2. 近年、子牛のFMT(糞便移植)が難治性の下痢の治療に有効であることが明らかとなった (Nature communication. 2021 12:161)。
      3. 国内でも東北大とNOSAI千葉の研究グループが糞便移植に関する報告を発表しており、より効率的なFMTのための製剤の普及が期待されている(Microbiome. 2022 Feb 21:10(1):31)
    4. ④ 産業動物の疾病発生にも消化管内マイクロバイオータが深く関与していると考えられ、これらの微生物叢を標的とした治療法がこれまで解決困難であった難治性疾患の解決の糸口になると確信している。
    5. ⑥ ウシ、ウマをはじめとした産業動物の消化管内マイクロバイオータ及びそれらが産生する各種代謝物と各種疾病との関連を精査する。さらにこれらの微生物叢を介した難治性疾病の診断法の開発および治療法、予防法の確立を目的とした研究を行っていく。
    6. 以下に具体的な研究計画を述べる。
    7. 応募者はこれまでにウシ、ブタの様々な産業上重大な経済的損失をもたらす各種疾病を引き起こす病原体を対象とした網羅的な遺伝子検査の開発を行い、成果を挙げてきた。
  3. 具体的な研究内容
    1. 消化管内マイクロバイオータと疾病の関連性の精査、病態解明およびそれらの微生物叢と代謝物を活用する方法が必要である。すなわち、各種疾病における腸内環境の状態を"見て”、現象を"知り"、"制御する"必要がある。
    2. 1. 腸内環境の状態を”見る”
      1. 背景
        1. 医学領域に比べて報告は限定的なものしかなく、基礎データ、臨床データが蓄積がなされていない。
          1. 様々な疾病との関連が報告されている。これらの疾病を対象とする。
          2. 脳-腸連関
          3. 迷走神経性消化不良
          4. 熱射病
          5. 肺-腸連関
          6. BRDC
          7. 乳腺-腸連関
          8. 乳房炎
          9. 生殖器-腸連関
          10. 子宮炎
          11. 各種消化器疾患
          12. 子牛の下痢症、特にロタウイルス
          13. HBS
          14. 肝炎
          15. 脂肪壊死症
          16. 周産期疾患
          17. 乳熱
          18. ケトーシス
      2. やること
        1. 1. 腸内細菌叢のディスバイオーシスと各種疾病をメタボロゲノミクス手法により解析
          1. 知りたいこと
          2. 1. 各疾病罹患個体での腸内細菌叢にディスバイオーシスが生じているか否か。
          3. 2. 特定の代謝物の産生の産生の有無
          4. 3. 産生された代謝物が生体に与える影響について
          5. 方法
          6. 1. 腸内細菌叢の分析
          7. NGS Miseqがあればよいが
          8. ユニバーサルプライマーを用いてPCR
          9. アンプリコンシークエンス
          10. 解析方法は?
          11. QIIME2
          12. 2. 糞便中の代謝物の分析
          13. 質量分析計
          14. 単一の方法はない、それぞれのサンプルにあった分析装置を選択する
          15. 材料
          16. 牛の糞便
          17. 疾病を罹患した個体
          18. 健康な個体
          19. 数はどれくらい?採取方法、保存方法は?
          20. メタボロキーパー
          21. 可能なら直接採材したもの
          22. なんとなく20 vs 20くらい?
        2. 2. より簡便な特定腸内細菌群を対象とした腸内細菌叢の解析方法の開発と各研究課題での応用
          1. 研究課題
          2. 3. SCFA産生細菌群の定量と肥満牛の各種難治性慢性疾患について
          3. 2. A群ロタウイルスの感染性に関連する細菌群の定量
          4. 1. Clostridium perfringensとアスペルギルスの分子疫学調査
          5. 日本国内での報告は限局的で乏しい
          6. 知りたいこと
          7. Q. 本当に病原性に関連しているのか?
          8. どのような牛が保有しているのか
          9. 毒素遺伝子の保有状況は
          10. 特定の代謝物は増えているのか
          11. 知りたいこと
          12. Q. ロタウイルスと腸内細菌叢には相関性はあるのか
          13. Q. 抗生剤により力価は下がるのか
          14. Q. 特定の細菌群の増減はあるのか
          15. 方法
          16. 代謝物の解析
          17. 質量分析計
          18. 簡易な方法はない?
          19. 腸内細菌叢の解析
          20. リアルタイムPCR
          21. Taqman PCRが望ましい
          22. 対象遺伝子は?対象の細菌群は?
          23. 対象遺伝子
          24. 16srRNA遺伝子
          25. 他のより特異的な遺伝子
          26. 対象とする細菌群
          27. FISHフローサイトメトリーによる検査
          28. 視覚的に検査、定量が可能
          29. 機械あるの?
        3. 3. 疾病の診断精度の向上
          1. 画像診断技術、遺伝子検査等、他の生体サンプルを用いた各種検査方法の開発
          2. 遺伝子検査
          3. 血液検査
          4. 内視鏡検査
          5. 超音波検査
          6. 血液検査でドットプロットなどは?
    3. 腸内環境の現象を"知る"
      1. 宿主と腸内細菌叢間のクロストークを解明する
        1. 1. 腸内環境の変化がもたらす感染性病原体の感染性の影響
          1. 腸管オルガノイドを用いた嫌気性細菌培養システムの開発
          2. ウシiPS細胞を用いた腸管オルガノイドの作成
          3. Clostridium perfringensとAspergillusの共培養
      2. 難培養性細菌の細菌培養への挑戦
    4. 腸内環境を"制御"する
      1. プレバイオティクス
      2. プロバイオティクス
      3. FMT
      4. メンブレンベシクルを利用したワクチン開発
        1. 臓器連関を利用した疾病制御法の確立
      5. シンバイオティクス
        1. 抗生物質に依存しない消化管疾病の治療法の確立
    5. 位置づけ
      1. 基礎研究と応用研究の橋渡しとなる重要なフェーズ
      2. メタゲノミクスアプローチは腸内環境での各種因子の相関関係は分かるが因果関係は明らかにできない
      3. 細胞や動物を使用した実験も視野にいれた研究へと発展させていきたい
    6. 位置づけ
      1. 基礎研究
    7. 位置づけ
      1. 応用研究
        1. 腸内環境を制御することにより疾病を治療、予防する